【弁護士解説】謝罪要求

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「悪いことをしたら謝罪してもらいたい」という感情はとても自然なことだと思います。

日頃、なにか不祥事が起こるたびにいろいろな立場の方が謝罪しているのをテレビで見ると、謝罪というものが簡単にさせられるかのようにも思えてきます。

しかし実は、法律の世界では謝罪というのは簡単なものではありません。

むしろ、基本的には「謝罪を要求することはできない」のです。

違法な行為についての法的責任は、民法に定められているところに従います。

日本の民法は、違法な行為に対しては損害賠償での対応を原則としており、それ以外の法的責任は生じません。

唯一、名誉に対する侵害についてだけ、民法723条が「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と定めています。

「名誉を回復するのに適当な処分」というのは、多くの場合で謝罪の広告をすることを命じる場合が多いです。

ただし、すべてのケースで謝罪広告が認められるわけではありません。

裁判所は、謝罪広告を行う必要があるかを検討し、その必要があると考えた場合に謝罪広告を行うことを命じています。

謝罪広告をさせない場合の理由が「原告の名誉を回復するために,さらに謝罪広告を掲載する必要があるとは認められない」というものです。すなわち、損害賠償だけでは名誉が回復されない、という場合でなければならないということです。

たとえば、ツイッターの投稿で名誉を棄損したという事例で、次のように述べました。

「本件各投稿による原告の被害の程度が前記(4)のとおりのものであり,公刊の新聞・雑誌等のマスメディアを介した名誉毀損でもなく,被害の程度としては深刻とまではいえないことに加え,本件各投稿による名誉毀損の内容及び態様,程度やその前後の経緯等の諸事情,本判決により被告に対し慰謝料の支払が命じられることなどを総合的に考慮すると,本件各投稿で毀損された原告の名誉を回復するには,前記(4)の金額の損害賠償を認めることをもって足り,謝罪広告の掲載が必要であるとまで認めることはできない」

これは「公刊の新聞・雑誌や周知度の高いブログ等に比べれば公衆への周知度は相対的に低いツイッター上の投稿であること,ツイッター上の投稿は,時々刻々と新たな投稿が過去のものの上に重なっていくものであるから,本件各投稿について,ツイッターの一般読者において,現時点においてすぐには閲覧可能な状態にはないこと」などが大きく考慮されたようです。

したがって、いわゆる「バズった」場合には結論が異なる可能性があります。