【弁護士解説】プロバイダ責任制限法とは
プロバイダ責任制限法とは、正式な名称を「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」と言います。
正式名称を見ても分かるように、①損害賠償の制限と②発信者情報の開示に関する規律の2つを定めた法律です。
この法律はインターネットサービスプロバイダだけでなく掲示板・SNS の管理者も同じ規律に服させています。
責任の制限というと、「えっ」と思われる方もいるかもしれません。
プロバイダの責任に関する条文は次のものです。
(損害賠償責任の制限)
第三条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
2 特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
何やら難しくよく分からないような感じで書いてありますね。
この条文は主に掲示板・SNSの管理者に対してで考えるのが正解です。
まず1項目、掲示板・SNSの管理者は投稿された記事の削除を行うことができる立場にあります。そして、責任が制限されない場合として「他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」が定められています。
そのため、「自分の管理する掲示板・SNSで誰かの権利が侵害されていることを知らなかったときは賠償責任を負わない」ということになります。
次に2項目、これは「投稿を削除した場合には、その投稿が他人の権利を不当に侵害するものだと判断する相当の理由があれば、投稿者に対する賠償責任を負わない」ということです。
2項目が最も重要で、投稿者には「言論の自由」があるため、掲示板・SNSの管理者の判断で投稿を削除することは、その自由(権利)を奪うことになる場合があるので、その賠償責任を制限すると明示して規定しておく必要があったわけです。
つまり、責任の制限というのは、「自分の管理する掲示板・SNSで誰かの権利が侵害されているという申告があって、権利侵害が確かにあると判断できる場合には、投稿を削除しなければならない」ということを複雑に書いているのです。