【弁護士解説】2021年プロバイダー責任制限法の改正

2021年4月21日にプロバイダー責任制限法による発信者情報開示に関する規定が改正されました。

これまでの発信者情報開示の手続きには、大きな問題がありました。

それは、複数回の開示手続きを経ないと開示されないということや、海外事業者の場合に開示が得られない場合があるなど、手間も暇も費用もかかるうえに、空振りに終わる可能性すらあると言うことです。

これでは誹謗中傷は「やりっぱなしでお咎めなし」ということになってしまいます。

そこで、今回の改正では「手続きを1回でまとめる」ことと「ログインしたときのアクセス情報」を開示の対象とするという2つのテーマが盛り込まれました。

「手続きを1回でまとめる」ことのメリットは、時間短縮と弁護士費用を抑えることにつながる可能性があります。

時間短縮では、これまで1年以上要していたものを、数ヶ月~半年で開示を終わらせることを目指しています。

具体的な手続きの策定や動き始めた際の裁判所の対応など、実際に動いてみてからの検証が必要な部分でしょう。

「ログインしたときのアクセス情報」の開示については、SNSなどで一部「投稿時のアクセス情報を残さない」という場合があったことを踏まえ、ログイン時のアクセス情報についても開示の対象となることを明文化したものです。

特定の個人による執拗な中傷に対しては今回の改正で迅速な対応が可能になったと言えるでしょう。

炎上のケースでの問題、「不特定多数から誹謗中傷が殺到すること」に対応できているとは言いがたいところがあります。

そもそも発信者情報開示がされる場合は不法行為、特に名誉毀損罪や侮辱罪にあたる場合がほとんどであるのが実際です。犯罪である以上、本来的には警察機関による対応がなされるべきではないのか、という問題があります。

また、今回の改正でも海外のプロバイダに対する措置としては完全に対応しているとはいえません。これについては一つの国のみで対応できることではなく、国際的な枠組みが待たれるところです。

まだまだネット上での誹謗中傷に対する対応が完全とは言えない状況ですが、具体的な手続きの概要や現場での運用をみて、さらによりよい手続きにしていくことが求められるでしょう。